2023年07月05日
今回は、これまでに取材を行った食品・飲食関連6社の事例のポイントをご紹介します。
食品業界や飲食業界など、人間の基本活動である「食」に関わる業界は、とりわけSDGsのゴールと関連が深いカテゴリーです。貧困の課題、フードロスや飢餓の課題、廃棄物の課題、海と陸への影響への課題などを筆頭に、17の目標と直面するところが多いこの業界では、いま中心として進めている事業がそのままSDGsに影響を及ぼす可能性を持っています。
前回の事例まとめのテーマであった「サステナブル経営」とはややニュアンスが異なり、各企業からは非常に高い優先度をもって、中心事業そのものをSDGs達成のために改善していこうという動きが感じられます。
戦後の日本で、食糧難や栄養不足に苦しむ人々を見て食の大切さを痛感し、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を生み出した日清食品の創業者・安藤百福。SDGsそのものと言える、"食で人々の健康と平和に貢献したい"という創業者の思いは、現在もグループ全体の理念として継承され続けています。
気候変動問題への対策を根幹に置き、さらに「創造」「食」「地球」「健康」「子どもたち」の5つの活動テーマで、創業100年までの50年間で100の社会貢献を目標にかかげる同社は、世界平和や豊かな社会につながる未来に向かって進化を続けています。
食品業界大手のGlicoでは、2021年3月に豊かな地球環境を未来につないでいくことを目指し「Glicoグループ環境ビジョン2050」を策定。CSR委員会などが中心となって、大きな課題となっている気候変動への対応においてどう取り組みを推進していくかをまとめています。
そこでは「温室効果ガスの削減」「水資源の活用」「包装資源の活用」「食品廃棄物の削減」の4つを重要課題とすること、そして2050年をゴールとした中長期ビジョンとKPIまで明確にし、取り組みを続けています。
SDGs採択以前からサステナブル推進活動に取り組み続けてきたという香辛料のトップメーカー・エスビー食品。天産物であるスパイスやハーブが気候変動によって生産できなくなればビジネスは持続できないことから、早くから生態系への影響を考えた原料の調達や持続可能な資源利用を模索してきました。
特にスパイスなどの生産においては、児童労働や劣悪な労働環境などが課題とされてきた歴史があることから、フェアトレードなど持続可能な原料調達にも取り組んできました。他にも「休眠スパイス」を最後まで使っていただくためにスパイスの活用法を提案するなど、フードロス削減活動も推進しています。
マクドナルドはSDGsの17の目標のすべてのゴール達成に関わるなか、特に事業との関連性の深い目標を優先的な取り組みに定めています。原料調達の視点、働く場所としての視点、全世界に店舗を構えることからの視点など、さまざまな視点から6つの目標に継続的に取り組んでいます。
また、SDGs達成には「経済、環境、そしてFUN(楽しさ)の3つがそろわないといけない」という理念を持っています。使わなくなったハッピーセットのおもちゃを回収・再生する「おもちゃリサイクル」によって消費者の参加意欲を誘うなど、楽しいSDGs活動も展開しています。
全国にフルサービス型の喫茶店を展開している株式会社コメダ。地球環境にも生産者にも配慮したコーヒー豆を使う、SDGsカードを設置したり石灰石からできたメニューブックやエコストローの採用など、SDGsを知り実際に触れることができる工夫を凝らした新店舗の展開、環境負荷の少ない"プラントベース(植物由来)"のメニューだけを扱った新業態の喫茶店、といった独自のSDGs展開を進めています。
さらにお客様だけでなく、地域活動や他企業とのコラボなどにも取り組み、喜びと楽しみで「SDGsの輪」を広げる活動を広げています。
アサヒビールでSDGsを推進する事業部が独立して新会社となったアサヒユウアス。そのルーツは、未活用だった間伐材や焙煎麦芽などを原料に使用し、森の香りがするエコカップを開発、使い捨てしない消費行動への意識変容を狙った事業です。これを継続させるため新会社として独立したことから、サステナブルに特化した事業を行うグループ企業となり、サステナブルプロダクツの開発販売やサステナブルドリンクの製造販売に取り組んでいます。
社名の「ユウアス」は、「ユウ(YOU・あなた)」と「アス(US・私たち)」を意味し、「共創で循環型社会の実現を目指したいという思いが込められています。
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。